茅ヶ崎高等学校文楽部に見学に行ってきました(第二回)
「傾城阿波鳴門 巡礼歌の段」
阿波の十郎兵衛・お弓の夫婦は主君の盗まれた刀を探し出すため、銀十郎と名を変えて盗賊の仲間に入り、大阪で暮らしています。ある日、「追っ手が迫っている」という手紙が届き、不安が募るお弓のもとに巡礼姿の女の子が尋ねて来ます。
手紙を読むお弓さん。
このように、小道具を使う場合は、遣い手は人形の手首の内側についている輪っかに指を通し、自分の手で道具を持ちます。
尋ねてきた巡礼姿の女の子。実はこの子はお弓さん夫婦が国に残してきた娘、おつるちゃんなのです。
「アイ、父様の名は十郎兵衛、母様はお弓と申します」
身の上話を聞くうちにこの子が我が子であると分かったお弓さん。思わず自分が母親であると名乗り出ようとしますが、しかし名乗ってはこの子まで盗賊の子として同罪に問われる事になる。心を鬼にして、「国に帰って親の帰りを待つのがよい」と追いかえします。
お弓さんが母親だとは分からないけれど、優しい女の人に会ったことのないおつるちゃんはお弓さんと別れたくない。一緒に行こう、とお弓さんの手ぬぐいを離しません。
手ぬぐいを引き合う二人。二人の間でぴんと張った手ぬぐいに何とも言えない緊張感を感じます。
「別れとむない」「別れとむない」「これ今一度顔を」
とうとうお弓さんは涙を飲んでおつるちゃんを追い返します。
しかし、我が子の後姿を見送りながら、今別れてしまってはもう逢うことができないと思い直し、あとを追いかけるのでした。
これはすごい。高校生のみなさんに、なぜ親のいない幼い子どもや、子を想う母の心情を表現することができるのでしょう。
ここまで30分ほどの場面なのですが、そんな時間を感じさせないほどの迫力で、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。
「高校生の子達はまだまっさらな状態なので、素直に演じることができる。それがかえって良いのでしょう」と桐竹あづま師匠。
大人になると、上手に見せたいという欲だとか、色々と余計なものがついてしまい、うまくいかないことも多いのだとか。
普段、こんなに近くで見られることはないので緊張しました、と部員のみなさん。
いえいえ、素晴らしかったです!
私はといえば、初めて間近に見る乙女文楽にすっかり魅せられ、自分もやってみたい!という気持ちがむくむくと沸いてきました。
第三回(最終回)は「乙女文楽・体験編」をお届けします!