茅ヶ崎高等学校文楽部に見学に行ってきました(最終回)

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茅ケ崎高等学校文楽部見学レポート、今回が最終回です。
なんと実際にお弓さんの人形を遣わせていただくばかりか、舞台衣装である袴まで着せていただきました!


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左から桐竹祥元さん、桐竹あづま師匠
人形をつける前に、まず、手数(てかず)と呼ばれる一つ一つの決められた動きを覚えます。
「人形をつける前に、人形が動く通りに自分が動いて、それを身体に覚えこませるんです」
実は、最初に乙女文楽についてお話を伺った際、一番興味を惹かれたのがこの部分でした。
人形というのは「手(手先)で動かす」ものだとばかり思っていたのに、そうではなかった。乙女文楽では、身体全部で人形を遣うのです。
桐竹師匠は「五感全部で遣います」とおっしゃいます。
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こちらはおつるちゃんの方に駆け寄る場面。
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私が遣わせていただくお弓さんについてお話を聞きます。
お弓さんは、昔の女性なのだから、内股で歩くこと。
着物を着ているのだから、”そのように”歩くこと―
現代の自分の身体のままでは、遣えないということです。
そして、子どもと別れた母親の心情。
おつるちゃんを行かせたくないけれど、自分は追っ手がかかる身であり、おつるちゃんをそばに置いてはおけないという葛藤。
自分にない身体と、心情で、遣わなくてはならない、それは非常に心細いことでもありますが、同時に、そこに言いようのない魅力を感じました。
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数回繰り返しただけでは手数はとても覚え切れませんが、この辺で実際に人形をつけさせていただくことに。
かなりの重さを感じます。腰をしっかり立てていないと、前に傾いてしまいます。
人形の頭(かしら)を前後に動かそうと自分の頭部を動かすと、顎が出てしまい、なんとも格好のつかない姿に…訓練が必要です。
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「目線が大切」と桐竹師匠。
遣い手は常に人形と同じ目線でなければいけません。
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実際に人形をつけてみて、分かったのですが、遣い手には人形がまったく見えません。自分の前にあるわけですから、当然と言えば当然なのですが、そのためこのように鏡の前で練習したり、他の人に見てもらいながら練習するそうです。
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桐竹師匠が「骨抜き」と呼んでいらっしゃるお弓さんのしぐさ。
手を左右にフラフラと振りながら首も左右に振り、歩み出します。挑戦しましたが、手と足と首の動きががうまくかみ合いません。難しい!
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大人の女性の泣く場面では、手ぬぐいや着物の袖を口元にやります。
口元の針はそのためのものなのです。そこにさっとひっかけます。
昔の女性の泣きの表現です。
この後、お弓さんが手紙を読む場面、縫い物をする場面なども教えていただきました。
こうして師匠に一つ一つ直していただきながら、練習をするのですが、だんだん自分が直されているのか、人形が直されているのか、わからなくなってきます。自分の注意や意識も、人形の方へ行ったり、自分の方へ移ったり・・・中心が行ったり来たりする感じです。これは面白い体験でした。
気になったので、練習が終わったあとで伺ってみました。
「師匠は、遣い手の動きを直していらっしゃるのでしょうか、それとも人形の動きを直していらっしゃるのでしょうか」
「人形です」
間髪いれず、桐竹師匠、祥元さん、お二人が同時におっしゃいました。
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やはり、人形、なのです!
故・桐竹智恵子師匠は、人形に遣われる、動かされるのが良いと
おっしゃっていたそうです。
最後に、舞台で作品を上演する際には必ず一番初めに舞うという、「三番叟」(さんばそう)の練習も見せていただいて、およそ4時間に渡る文楽部見学+体験が終了しました。
普段なかなか目にすることのない乙女文楽に触れることができた貴重な時間でした。
2月にお能のワークショップ「つながる身体 伝える身体―能における身体技法」を開催したときにも思ったことですが、伝統芸能、長い時間をかけて培われたもの、続いていくものというのは、やはりすごいです。分かろうとするとどんどん分からなくなるような、そんな奥深さを感じました。
桐竹あづま師匠、桐竹祥元さん、文化祭前の大事なお稽古の時間をさいてくださった文楽部の皆さん、そして文楽部顧問の紀平先生、本当にありがとうございました!
【お知らせ】
メディアセブンでは、この秋、桐竹あづま師匠、桐竹祥元さんを講師にお招きして、乙女文楽ワークショップを開催します!
なかなか触れる機会のない乙女文楽を、ぜひ体験してみてください。
詳細が決まり次第、メディアセブン公式サイト、CDCサイトなどでお知らせします。

18. 7月 2009 by CDC STAFF
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