雨ニモマケズ、風ニモマケズ、本ノカタチ
大型の台風17号がひたひたと関東に近づくなか、印刷の余白Lab.野口尚子さんとホンノカタチワークショップを開催しました。
本がどのように設計されているかを学び、本の構成要素である紙を知り、その上で「読みにくい本」を製本しようというワークショップです。本が好きな方、本にかかわる仕事をされている方にあつまっていただきました。
とっかかりとなったのは、野口さんによる、「オブジェとしての本」を追求する装丁家・松田行正さんの束見本のレビューです。なかでもボール紙を本文用紙につかった巨大な束見本は、参加者の注目をあつめていました。
本のカタチに関心が向いたところで、みんなで図書館で本を探します。レビューの効果か、それとも本好きのポテンシャルか、ユニークな本がどんどんあつまってきます。
ちなみに、この方の選んだのは『円空』という一冊。墨で円空と箔押しされた表紙がインパクトのあるこの本は原弘さんによる傑作です。
選んだ本は秤で重さをはかったり、サイズを計測したりして、一冊一冊に「本のカタチの通信簿」をつけていきました。本に定規を当てるのは、もちろんみなさんはじめてです。
はじめてついでに、終わった人から、紙厚を測るマイクロメーターや印刷物の網点をみるマイクロスコープで遊びました。
時間が経つのも忘れて熱中していたら、はじまったころは快晴だった空にもすっかり暗雲が立ち込め、台風襲来という雲行きに…。それでもワークショップは終盤を迎え、いよいよ「読みにくい本」をつくります。
まずは野口さんから今回使う紙のレクチャー。読みにくさを追求するために、一般的に本文用紙に使われる紙にくわえて、極端に厚い紙や薄い紙、さらにはトレーシングペーパーや書道半紙までとりそろえました。
ネタを提供するぐらいの気持ちで広げた紙のバリエーションでしたが、みなさん変わった紙を選ばれて…。しかも複数の紙を組み合わせた上に変わった判型にしようとするから、断裁が追いつかないわ、背をボンドで固めるのがむずかしいわ…、野口さんともども製本サポートはてんてこ舞い。
それでもどうにか表紙でくるんで、背のボンドをアイロンで溶かして固めなおしたら「読みにくい本」のできあがりです。
このときすでに関東地方は暴風圏内。それでもめげずに何冊かの「読みにくさ」をレビューしてワークショップを終えました…。
全ページ袋とじでしかも表紙が硬い本
高くて奥行のない本
硬い紙と薄い紙を組み合わせた豆本
雨ニモマケズ、風ニモマケズ、ホンノカタチを深堀りした午後でした。