「まちの断片」 第六回 伊沢 正名さん
こんにちは、ヤキュージョーです。
まちの断片シリーズ第六回は写真家、糞土師の伊沢正名さんをお招きしました。
伊沢さんは30年以上もキノコ、変形菌、カビなどを撮り続け、近年では人間の糞を土に還す活動をする糞土師(ふんどし)として活躍されています。さてさて変わった肩書きですが、何をする人なんでしょうね。
伊沢さんは高校時代に周囲の人々との関係がうまくいかず、仙人になることを目指して山へはいったそうです。
人間嫌いになってしまったそうですが、山で出会う人たちはとても親切であったことなどから、自然保護運動というかたちで社会復帰したのです。
そこでであった自然の美しさに魅了されて、キノコなどの写真をとり始めたました。
そして伊沢さんは自然のサイクルのなかでキノコが死んだ生き物や排泄物を分解して腐らせ、土に還してゆくことを知ります。
キノコは食べるものとして認識されているが、生態系の中でとても大事な役割を担っていることを学んだわけです。
また、キノコの中でもほかの樹木と共生しているものがあり、キノコをみれば森の健康状態がわかるそうです。
たとえばシラカバと共生するベニテングタケがあります
これらは根で繋がっていて、キノコはシラカバの根に菌根をつくって水分や土の中の有機物を送ります。一方、シラカバは糖類などを菌根に送り込むのです。このような関係を見ても毒キノコも森のなかで非常に重要な役割をしていることがわかります。
カビについてもいくつかスライドを見せていただきました。
これはうどん粉病という植物の病気でカビが生えます。それを顕微鏡で見ると美しい生命世界が広がっているのです。
このほかにも冬虫夏草で知られるセミタケを紹介いただきました。
これも生物に寄生して宿主を殺傷してしまうカビですが、このセミタケが多く見られるのは宿主の昆虫が大量発生した翌年だそうです。つまり生態系は自らバランスをとろうとしているのです。
そしてこの写真がその後の伊沢さんの活動を理解する上で大切な写真になります。
哺乳類が草を食み、糞をする→それを分解するキノコが生える→その周辺の土の栄養が高まる→草がよく生える
というサイクルをあらわしています。
これを実践するのが糞土師(ふんどし)なのです。
伊沢さん曰く、
「私には信念があり、それを形にしているだけ」
伊沢さんはキノコ写真家をつづけるなかでいわゆる「のぐそ」の大切さを感じて、1974年1月1日から屋外での排泄活動を始めます。
そして25年たった1999年についに100%(365日)の、のぐそを達成したそうです。
そもそも水洗トイレが必要になったのは人間が大量に集まって住むようになり都市化が始まってからです。そしてその下水の処理には膨大なエネルギーとコストがかかっていることに伊沢さんは問題視しており、さらにはこのようなウンコの話などがタブーとして扱われるような社会の状況を「日本社会の大きな欠点である」と指摘します。物質的な豊かさだけが優先されるが、マイナーで汚いと思われているものでものでもとても大切なものがある。そこにこそ人々の良識を発揮すべきなのだと。
我々の住環境の今後を出口から考えてみる大変貴重な機会になったと思います。
伊沢さん、参加者のみなさんどうもありがとうございました。
伊沢さんの著作「くう・ねる・のぐそ」(山と渓谷社)もあわせてご覧ください。