「アイデア」の批評性の在り処

グラフィックデザインの専門誌「アイデア」の編集長・室賀清徳さんに、同誌の編集における批評性や、編集やデザインのプロセスについて話を伺いました。
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印象的だったのは、その批評性の在り処です。


「アイデア」は、室賀さんが編集長になって以来、ほかのデザイン誌とは一線を隔す特集を組んできた媒体です。ニュース性のある情報にかぎらず、またグラフィックデザインをせまくとらえることなく、現在と過去を問わず批評性のあるデザインを取り上げたり、マンガやライトノベル、ゲームといった、いわゆる「デザイナー仕事」ではない領域に目を配ったりしています。
最近では、たとえば「日本オルタナ出版史1923-1945 ほんとうに美しい本」(354号)では、関東大震災から敗戦までのあいだ、インディペンデントな出版活動を実践していたリトルプレスを特集しています。戦後出版史につらなる前史には書き留められなかったリトルプレスの活動を、本の美しさの再定義するかのように取り上げていました。
また、「漫画・アニメ・ライトノベルのデザインEXTRA」(348号)では、商業出版と同人出版が単純には切り分けられない領域で活躍する若手デザイナーたちを特集しています。
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このような特集の組み方には、即時性を売りにする媒体から資料/史料としてアーカイブする媒体への切替が意識されています。グラフィックデザインにまつわるニュースを伝えるのではなく、残しておくべき情報やいま掘り起こすべき情報を、特集としてまとめておこうという意図です。
その意図は、創刊から最新号までの目次情報を公式サイト上で整理して掘り返せるようにしていることにもうかがえます。
http://www.idea-mag.com/jp/magazine/
それにくわえて、これら特集は、「アイデア」が創刊以来ずっと伴走してきたグラフィックデザインの歴史に対する批評的な視点もふくまれています。
「アイデア」は1953年に創刊された当初から、国際的な視野から海外の最新動向をレビューするとともに、国内のデザイナーの仕事を取り上げることで「グラフィックデザイン」という領域を立ち上げてきました。いわば、戦後日本のグラフィックデザインの趨勢とともに歩をすすめてきた媒体であり、グラフィックデザインを定義し、その歴史をつくりあげたきた存在です。
しかし、何かを定義することは同時に外部をつくることでもあります。その定義からこぼれ落ちていたのが、最近特集をしたライトノベルやゲームといった分野でした。それらはデザイナーの仕事としてふり返られず、サブカルチャーにおけるアノニマス(無名性)な存在としてふり返られずにいました。
もちろんグラフィックデザインの盛り上がりのためにはメインストリームをつくる必要はあったわけですが、いまやそればかりでは逆に先を見通せません。そこで、これまでの「グラフィックデザイン」にはふくまれなかったグラフィックデザインを「アイデア」が取り上げることで定義を拡張しようとしたわけです。いや、むしろ、蚊帳の外にあったグラフィックにこそ、現在ではフロンティアがあったのかもしれません。
室賀さんは、グラフィックデザインに語られてきたことのなかの、「語られてこなかったこと」に興味があるといいます。それはグラフィックデザインという領域に潜在する方法や可能性を、これからの世代が活用するためです。

07. 9月 2012 by CDC STAFF
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